大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)86号 判決 1948年12月14日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は末尾添付の別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおりである。

上告人は本件訴願の申立人ではなく第三者であるから、地方自治法第六六条第三項によつて裁決書の交付を受けるべきものではない。従つて上告人が裁決に不服があるときは、同条第四項によつてその裁決の告示の日から三〇日以内に出訴しなければならない。上告人は選挙長の上告人に対する当選取消告知書を同項にいう決定書又は裁決書に該当するものとし、上告人が右告知書を受けた日を以て出訴期間の起算日とすべきものであると主張するのであるから、右取消告知書について記録に徴するに、右告知書は被告が昭和二二年一二月一五日(原判決理由中に二五日とあるのは誤記と認める)上告人の当選を無効と裁決した後、選挙会が上告人の当選を取消し選挙長が同月二八日(原判決理由中に一八日とあるのは誤記と認める)上告人に告知したものである。しかしながら争訟の提起された後当選人が当選を失うのは異議の決定、訴願の裁決又は判決によるのであつて、選挙会に当選人の当選を取消す権限はない。殊に本件では上告人の当選を無効とした被告の裁決の確定前に当選を取消したのであるから、その違法であることは一層明白である。本件で選挙会がたまたまこのような違法な行為をしたからと言つて、かかる違法な行為の告知書が地方自治法第六六条第四項にいう決定書又は裁決書に該当しないことは明瞭であり、その交付の日を出訴期間の起算日とすることのできないのは勿論のことである。訴願の裁決は申立人に裁決書が交付されることによつて効力を生ずるから、地方自治法はその日を以て申立人の出訴期間の起算日としたものと解せられるが、申立人以外の者に対しても等しく裁決書交付の日を以て起算日とするならば論旨のいうように不公平を生ずるものと言えるけれども、同法は裁決書の交付を受けない者については裁決の告示の日を起算点と定めているのであつて、申立人と申立人以外の者との間に何等不公平を生ずることはないのである。

よつて本件上告は理由がないので民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例